医師と手術と記念

先々週から体の一部に痛みを感じ始める。
翌週、患部が腫れ、熱を持ちはじめたので思い切って医師に相談。
医師「応急処置はいたしますが、このまま行けば症状はもっとひどくなるでしょうね」
俺「じゃあ、どうすればいいんですか!先生!」
医師「...手術...でしょうね。」
俺「...手術...ですか...」
レントゲン写真にはっきりと写る陰。
後ろから助手らしき若い女性が心配そうに覗き込む。
診察室に流れるいやな沈黙。
俺「わかりました。先生に託します。」
医師「そうですか。ではこちらも準備がございますので1週間後に。それまでは安静にしていてください。それと心の準備を...」
俺「わかりました。よろしくお願いします」
そして1週間後の昨日。
前回と同じ処置室。前回と違う医師の真剣なまなざし。
先生「...では、麻酔をかけますね。」
俺「お願いします...先生、俺大丈夫ですよね...?」
俺の不意の問いかけに、医師は穏やかに答える。
先生「当たり前じゃないですか。私を信頼してください。」
手術が始まった。
医師と助手のやりとり、医療器具の金属音をぼんやりと聞きながら、俺は静かに眼を閉じた。
最初こそ順調だったものの手術は困難を極めた。
医師のあせった声、助手が慌しく動き回る足音が朦朧とする意識の中へ飛び込んでくる。
麻酔で感覚は無いが、患部付近を人の手がせわしなく移動しているのがわかる。
それからどれくらいの時間がたっただろうか。
突然、物音が止んだ。
その静寂を破り、医師の穏やかな声が耳に入ってきた。
医師「終わりました。手術は無事終了です。」
目を開けると、そこには医師の笑顔が。
後ろには助手も微笑んでいる。
こころなしか涙が浮かんでいるようにも見える。
俺「あ、ありがとうございます。」
俺は麻酔で呂律の回らない舌で何度も何度も感謝の気持ちを伝えた。




というわけで親知らずに抜いてきましたーー。
長くてすまん。
15分にも及ぶ大手術。
てか先生、処置中に「やべぇっ!」とか「ムリっ!滑るっ!」とか「こりゃ抜けんわー。」とかつぶやかないでください。
しっかり聞こえてますから。
とにかく抜きにくい歯だったらしく、抜いた歯を片手に”これがどれだけ抜きにくい珍しい歯だったか”を延々と語ってくれました。
記念にその歯をくれました。
でも使い道がありません。
というわけで「抜いた親知らずの便利な使い方」を募集します。